ハンドライフルのマコちゃん

取得後のお話(技術的なこともちょっとだけ)



ここでは、実際にハンドライフルを取得されてからのお話をしていきたいと思います。

やっと手に入れたハンドライフルを持って射撃場を訪れた初日、APS(Air Precision Shooting(エアー・プレシジョン・シューティング)……日本エアースポーツガン協会によるエアソフトガンを使った精密射撃競技)などの経験者なら悩まないところなのでしょうが、初めての方は「どうやって構えたら良いのかな?」って思いますよね?

まずはそういったことから始めてみたいと思います。

これからお話するのはだいたいの基本でしかありません。というのは、これとは違うやり方であっても、それで標的の真ん中に当たるのであれば、それがあなたの理想的なポジションだと思うからです。

それと、「ハンドライフルのマコちゃんは、こうして撃っているらしい」という感じで、あくまでも参考として読んでくださいね。残念ながら私は上級射手ではありませんし、射撃指導員でもありません。ピストルの指導者講習会も受講していません。いまだに諸先輩から教わりながら練習している人間ですから。



◎まずは服装について

構え方の前に、まずは服装のことについて。
ライフルとは違って、ハンドライフルの服装は特に決まりはありません。特に練習ではなんでもOKです。でも、試合で以下の2つをやると失格になってしまいますから、一応最初に覚えておきましょう。

1.くるぶしの隠れる靴をはかない(バスケットシューズみたいなやつはダメだってことです)

2.銃を保持する手に腕輪や腕時計をつけない

この二点は失格になる可能性がありますので、やめましょう。


以前はこれだけ守っていれば良かったのですが、最近はルール改正によって、「ドレスコード」もあります。どんな服を着なきゃいけないよっていうルールですね。簡単にまとめると、以下のようになります。

・ジーンズ、カモフラージュ柄の衣服、ノースリーブのシャツ、短すぎる短パン、ほつれた切り口の短パン、つぎあてや穴の空いているズボンは、ダメ。

・サンダルは、どんな種類でもダメ。

・スポーツに適さないように見える(不適切なメッセージの書かれたシャツを含む)シャツやズボンはダメ。

・チノパンツ、青色以外のジーンズは、当面の間はOK。



要は、スポーツマンらしい格好をしろ、ということでしょうか。上下そろいのトレーニング着(ジャージの上下)などを着ていれば間違いないということでしょうが、これは大会の規模がG3+(ジースリー・プラス)以上の場合が必須なだけで、地方大会では、上はポロシャツ、下はチノパンといった格好で大丈夫ですよ。



◎どうやって立つの?(右利きの場合)

まず、標的を真正面に見て立ちます。その状態から、体ごと90度左を向きます。そして右腕を真横に突き出します(右腕が標的の方を指していればOKです)。上げた右手が真横になっているかどうか自信がなければ、両方の手を一緒に上げて、それから左手だけを下ろしてみてくださいね。

足は肩幅くらいに開きます。この時に右足が床に引いてある射撃線からはみ出ていないことを確認して下さいね。違反になってしまいますから。

足元を見た時に、足は「並行になっている」、または、「逆ハの字」のどちらかですね。
ここで下半身が安定しているかを確認してみてください。ふらつく感じがするなら、左右の足の幅やつま先の角度を変更してみてくださいね。

首は標的に向けて90度右に回転させます。さらに首の角度は左右に傾けないようにしましょう。後頭部を後ろにしてふんぞり返るよりも、軽くあごを引くような感じです。

さぁ、これが基本です。(ちなみにこれをインラインスタンスと言います。知らなくても良いけれど、知っているとちょっと便利です)

この姿勢で構えてみたときに、首が右90度になんか曲がらないよ!とか、首が痛いとか肩が痛いとか、いろいろと体に無理がかかっていることもあると思います。特に私みたいに体が固くなってきてから始めた方は特にそうですし、首の曲げられる角度は人それぞれだからです。

その場合は無理にこの姿勢にするのではなく、ここから少しずつ修正していきましょう。


標的に対して90度左に向かっていた左右のつま先を、左右一緒に少しずつ右に回転させてみましょう。右腕は標的方向に向けたままですよ。インラインスタンスではつま先とかかとを結ぶ線と右腕とでできる角度が90度でしたが、これが80度とか70度とか、少しずつ鋭角になっていきます(説明できているかしら?)。

ここでは「標的正面に顔がまっすぐ向いているか」に気をつけましょう。

(またまた知らなくても良いけれど、知っているとちょっと便利です。これをオープンスタンスといいます)

上級者は、何回銃を構えても毎回姿勢が同じです。これを目指すにはインラインの方が良いのです(標的に向かって、体の向きは90度左、顔は標的方向ですから、中途半端な角度がありません)が、オープンの場合、この「姿勢の再現性」が難しいような気がします。でも、体に無理をかけてでもインラインにしなければならないわけではありません。


他にもう一つ。私もいまだに気を付けないと忘れてしまうのですが、下半身と上半身のズレにも気をつけましょう。何発か撃っているうちに、足をずらしてはいないのに銃が標的からずれているんです。下半身はずらしていないのに、腰から上だけが下半身に対して標的側(右側)に回転してしまっているんですね。下半身に対して上半身だけがねじられていないかも確認しましょう。

インラインでは、標的に対して体は左に90度、体に対して首は右に90度というように90度を基本にして姿勢のチェックをすれば良いので、構えやすいし、ずれたとしても見た目で修正が簡単です。角度が90度単位でないオープンの場合は、このように見た目でのチェックができませんから、自分の内的姿勢を確認しなくてはなりません。毎回同じ姿勢を再現できるようにするには繰り返し練習するしかないのかもしれません。


また、もう少し簡単なやり方もあります。でも、これは教本が無かった時に私がこのようにして始めたという内容ですし、基本となるインラインスタンスを無視した方法でもありますから、参考までに、ということで流し読みしてくださいませ。

まず、標的に対してだいたい90度くらい体全体で左側を向きます。手はだらーんと垂らして、足はなんとなく自然な感じで開きます(体育の授業の「気をつけ!休め!」の「休め」くらいの幅かな?)。そのまま右手を上げてみます。ここで、右手は標的の中心に向けて回転させてはいけませんよ。ただ自然に上に上げるだけです。その状態で右手が標的の中心を指しているならOKですし、ズレているなら、その分だけ足の立ち位置を回転させます。右手が指しているのが標的よりも10度左なら、左右の足をセットで右に10度回転させる、そんな感じです。右手が標的を行き過ぎたら、その分足を左に戻す……以下繰り返し。つま先と右腕との角度を保ったまま、体全体で回転する感じですね。


いずれにしても、体に無理な負担をかけない自然体で銃を構えた時に、意識して狙っていないのに銃口が標的中心を向いている、そんな状態が理想なわけです。

もし体に何か無理をさせて、不自然に標的方向を向かせているのであれば、疲れますし、銃の揺れにも繋がります。

繰り返しになりますが、自然に構えた時に銃口が標的中心を指している状態ならば、それがその人の良い型です。基本となる型はありますが、それを試した上で至った型ならば、それがベストポジションだと思います。足の幅・角度、クローズドスタンス/スクエアスタンス/オープンスタンス、胸と腕の角度、いずれであってもその方にとってのベストです。


私は、初めのうちは毎回構え方が違って、「これが私のベストだ!」という型をなかなか決められませんでした。足幅一つにしても、毎回同じ立ち位置にしたくて、調子が良い時の足の位置を地面にチョークで書きたかったくらいです。

でも、大丈夫ですよ。練習を繰り返すうちに、それは決まってきますし、体をリラックスさせて自然に構えると、意識しなくてもフロントサイトとリアサイトがピッタリ標的を向いているようになります。そうすれば、もちろん点数も上がってきます。

あの頃は、練習すればするほど、その度にうまくなっていく気がして、楽しかったなぁ……。今は停滞気味です。

だんだんと落ち込んできました。この文章を書いたことをきっかけに、再度がんばろー!



◎左手はどうするの?

左手がブラブラしていることで、右手や体全体のバランスが崩れるなんてことがないようにしたいですね。

そのための対策でよくやるのは、以下の二つだと思います。

一つ目は、左手をおへそのあたりに持って行き、親指だけををベルトにかける、という方法です。残りの4本の指は力を抜いて自然な状態にしておきます。ベルトにかける親指の左右の位置は、おへそから左腰の間で自分が自然に落ち着けるところですね。

もう一つは、左手全体をズボンのポケットに入れてしまうことです。

私の場合は、ポケットです。なぜかと申しますと、お腹が出っ張っているからなんです。そのため腰の位置でベルトが止まっていません。親指をベルトにかけたりしたら、ズボンが落っこちてきちゃうんですよ。

また、その日のズボンによってポケットも違いますよね?例えば、ジーンズのようなズボンとチノパンツでは、ポケットに手を入れた時の感覚は全然違います。そのため、左手をポケット入れるのであれば、練習の時も試合の時もハンドライフルを撃つ時には必ず同じズボンにするべきだとも言えます。私の場合は同じようなズボンしか持っていないのであまり問題がありませんが。

ちなみに、女性の方は調度良いところにポケットが無い場合が多いからなのかわかりませんが「ベルトのところに親指」派が多いようです。射撃をする時に、毎回同じところに左手を置くために、洋服の上からわざわざベルトをする方もいらっしゃいます。

それと、APS競技では、左腰に手をあてている(体育の授業の「前ならえ!」で先頭の人がするポーズ、そう言えば伝わりますでしょうか?)方もいらっしゃいますが、ハンドライフルやピストルでは見ないですね。ごめんなさい、理由はわかりませんし、もしかしたらいらっしゃるのかもしれません。



◎どうやって銃を持つの?

まずは右手でグリップ(ハンドライフルを持つ時に右手で握る、木でできている部分)を握りましょう。握る力は、強すぎず、弱すぎず。

曖昧な表現で申しわけないのですが、こればっかりは感覚なもので。実際にお会いしたら、このぐらいですよって握手できるのに……。

試しに思っいっきり力を入れて握ってみましょうか。その状態で標的を狙うと、細かくプルプルとフロントサイトが動いていて、なかなかトリガ(引き金のことです)が引けないと思います。

逆に、思っいっきり力を抜いて握ってみましょう。その状態では、ハンドライフルを支えきれず、だんだんと銃口(弾の出る部分=ハンドライフルの先っちょ)が下に下がってきませんか。

なので、その中間くらいの力=強すぎず、弱すぎず、というわけです。


この握る強さについてなんですが、諸先輩の意見をお聞きすると、意見が分かれるようです。

「力を抜いた自然体の構えの中で、グリップを握る力だけは気合を入れろ」という方もいらっしゃるし、「生卵を、割らずにやさしく包みこむように握った方が良い」という方もいらっしゃるし、という具合です。

これまた私の場合はという注釈付きですが、あまり強く握ると、発射の際の反動をうまく後ろに吸収できずに、銃口が跳ね上がる傾向があるような気がします。ちなみに、この銃口が跳ね上がる現象を「マズルジャンプ」といいます。知らなくても困りませんけれど。

逆にあまりにもふわふわと握ってしまうと、銃の重さで、銃口部分が下がってきてしまいます。本来、ハンドライフルと腕は一直線となって標的を向いていなければならないのに、腕はまっすぐになっているのに、ハンドライフルだけが手のひらを支点として標的に向かってお辞儀をしているような感じです。

もし、師匠と呼べる人ができたら、その方の意見に従いましょう。教えてくださる方を疑わずについていくのが上達の秘訣だと思います。師匠に逆らって、「だって、ハンドライフルのマコちゃんがそうしろって言ってたもん!」はダメですよ。


次いで、お父さん指とお母さん指との間にある谷の部分を、ハンドライフルの後ろから銃口方向に向かって真っ直ぐグリップに向けて押し付けるような感じにします。これにより、銃の発射時の反動をまっすぐに後ろに受けることができます。トリガをまっすぐに引くことにも役立ちます。

お兄さん指、お姉さん指、赤ちゃん指の3本は不自然に開かずに、そのまま右側からグリップを包みこんでいきます。

お母さん指は、まだトリガにかけないでくださいね。きちんとグリップの握りが完成するまで待ちましょう。射撃場の天井とか壁を見てみてください。ポツリポツリと穴が開いていませんか?この穴を増やすことになってしまいますよ。
実銃のトリガは軽いんです。ちょっと触っただけで弾が出ちゃいますからね。

お父さん指はグリップの左側に乗せます。グリップを見ると、いかにもお父さん指を置くために作られたような窪みがありますよね。これも知らなくても良いけれど、サムレスト(お父さん指が休む……なるほど)と言います。


最後にトリガを引くお母さん指です。まずお母さん指は、付け根から指先まで、どの部分もグリップには触れてはいけません。お母さん指がグリップに触れていると、トリガを引く動作で、銃も動いてしまいますから。

そして、指先の第一間接よりも先の部分をトリガにかけます。ただし、これは撃つ直前のお話で、それ以外でハンドライフルを握る時には、お母さん指はまっすぐに銃口の方を指してピンと伸ばした状態にしておくと安全ですよ。


次に、ハンドライフル特有のストック(グリップの後ろに伸びている、ライフル銃に付いているような木製の部分)の扱いです。

銃を標的に向けて持ち上げる前に、射台(射座に一人一つずつあるテーブルのことです)の上でグリップを握ってみましょう。

前述したような感じでグリップを握り、腕をまっすぐに伸ばします。すると、自然にストックの後ろの部分が右手の肘(ひじ)に軽く当たると思います。その状態で腕とハンドライフルは同化して、一本の棒のようになっているはずです。

そのまま、標的の高さまでハンドライフルを上げてみましょう。


このストックの扱いについて、良く言われることですが、エアピストルに移行した時のために、ストックに頼る構えをしない方が良いという意見もあります。ストックに頼って構える癖がついてしまうと、エアピストルを撃つようになった時に困るというわけですね。

それは否定しません。たしかにエアピストルにはストックがありませんから、ストックが無ければ撃てない体になっていては大変なわけです。

ですが(これも反対意見が多数あることもわかりますが、それでもあえて個人的な意見として申し上げたいのですが)、私は最初のうちはストックに頼っても良いと思うのです。その状態で上達し、エアピストルの申請に必要な初段を取った時点で、申請が下りるまでの数ヶ月〜1年近くを利用して、ストック離れを意識した練習を始める方が良いと思うからです。



◎どうやって標的を狙うの?

一言で言うと、フロントサイトとリアサイトの二つを合わせて標的を狙います。

男の子なら必ずといっていいほど、今までにおもちゃの鉄砲を持ったことがあると思います。きっとイメージしやすいですよね?女の子はそうはいかないかもしれません。だから、一番最初のところからお話しますね。

ハンドライフルを見てみましょう。銃の一番先っちょ(弾の出る部分)に「凸」型の金具、銃を右手で握るところ(=グリップ)の真上あたりに「凹」型の金具が付いています。

先っちょの「凸」金具を「フロントサイト」、後ろ側の「凹」金具を「リアサイト」と呼びます。日本語を使って各々「照星(しょうせい)」、「照門(しょうもん)」と呼ぶこともあります。


このフロントサイトとリアサイトの合わせ方ですが、いろいろとチェック箇所があるんです。

一つずつ見ていきましょう。


1.二つのサイトの上端を合わせましょう

まずは、フロントサイトの上端とリアサイトの上端を一直線になるようにそろえます。




図1.◯正しい合わせ方

図2.×フロントサイトが上(銃口が上を向いている)

図3.×フロントサイトが下(銃口が下を向いている)


2.フロントサイトの両端にある隙間を左右均一にしましょう

リアサイト「凹」の窪んでいるところにフロントサイトが入りますが、「凹」の窪みの幅よりもフロントサイトの幅の方が小さいはずですから、フロントサイトの両端に隙間が生まれます。この隙間を左右均一にしましょう。

もし左右に隙間が無い時には、リアサイト「凹」の窪み部分の左右幅を広げましょう。

銃種によりますが、だいたい0.1mmずつ広げたり閉じたりすることができるはずです。これについては、銃付属のマニュアルを読んでくださいね。

ちなみに、エアピストルを改造したハンドライフルではできないこともありますが、オリジナルのAPの状態では、フロントサイトの幅も変えることができます。ただし、これは調整するのではなく、フロントサイトそのものを他の幅のフロントサイトに交換することで行います。
残念ながら別売りです。銃種ごとに専用設計となっていて、それぞれ2〜3種類の幅が選択できます。





図A.◯正しい合わせ方

図B.×フロントサイトが左(銃口が左を向いている)

図C.×フロントサイトが右(銃口が右を向いている)


3.二つのサイトを、標的の黒丸の左右中心に合わせましょう

これは説明不要かもしれませんね。





図イ.正しい合わせ方

図ロ.×フロントサイトとリアサイトは合っているが、黒点に対して右を狙っている

図ハ.×フロントサイトとリアサイトは合っているが、黒点に対して左を狙っている


4.狙うのは黒丸の中心ではありませんよ

ここが大事なところです。

おもちゃの鉄砲を持って普通に標的を狙う時は、必ず標的の中心に狙いをつけませんか?(ちなみに、これを「センター照準」といいます)

少なくても私はそうでした。

精密射撃の場合は違うんです。先ほど揃えたフロントサイトとリアサイトの上端線の上に、標的の黒丸を乗っけるような感じにします。

これは「下際(かさい)照準」とか「六時(ろくじ)照準」(時計の文字盤で、6の数字の所を狙うから)と言います。

また、この際、サイトの上端線と黒丸の間は少しだけ離します。これは白一線(しろいっせん)開けるという言い回しを使いますね。


では、どのくらい離せば良いのでしょうか?

「髪の毛1本分」とか、「紙1枚分」なんていいます。





( ↑ サイトと黒点との隙間(赤2本線の間隔)は、白一線分開けます)


あるいは「フロントサイトとリアサイトの隙間一つ分と同じだけ」とも言います。





( ↑ 赤い部分3箇所の間隔を全て同じにするというやり方もあります)


どうしてサイトと黒丸の距離をこのくらいの間隔にするのでしょうか。
それは、思いっきり離してしまうと毎回同じだけの距離を保つことが難しくなりますし、逆にくっつくくらい近づけてしまうと、あまりにも狙いがシビア過ぎて逆に狙いづらいからなんですね。

この六時照準は慣れるまで狙いにくいとは思いますが、慣れますから大丈夫です。というか、何としても慣れてください。


なぜ?

照準の精度の問題なんです。

標的の黒い部分(これを「黒点(こくてん)」といいます)の真ん中を黒いサイトで狙うと、その境界線が曖昧になりますよね。

標的の白い部分を黒いサイトで狙った方が、はっきりと狙うことができます。


全ての弾が黒点(=7点〜10点圏)に入るだけの成績で良いのであれば、センター照準でも大丈夫です。

ただ、これでは10点を狙って10点が出ません。だいたいこのくらいの集弾率になっている、というだけの成績になってしまいます。

騙しませんが、騙されたと思って、まずはこれに慣れてみてくださいね。


センター照準では限界があります。実際にセンター照準で撃ってみて、それを実感しました。

同じ時期にハンドライフルを始めた知人が当たり前のように40発競技で380点を撃っている時に、私の公式記録は376点止まりでした。

まったくもってお恥ずかしい話ですが、私はエアピストルに移行してから六時照準に変更しました。ハンドライフル時代はセンター照準で過ごしたわけです。

こんな間違いは私だけで十分です。これからハンドライフルを始める方には、正しい方法で始めて欲しいと思います。



◎トリガの引き方は?

トリガ……日本語でいうと「引き金」ですね。

ただ単に引けば弾が出るトリガ、そんなものに引き方なんてあるのかよ!と突っ込まれそうですが、あるんです。

まずは、引き方以前のお話として、初めの頃は特に、不用意にトリガに指をかけないようにしましょうね。

人は、なぜか鉄砲を持つと必ずトリガに指をかけてしまうみたいです。試しにおもちゃの銀玉鉄砲を二人の子供に持たせてみたところ、二人ともトリガに指をかけて鉄砲を握りました。

ハンドハンドライフルは、鉛の弾を発射する実銃です。銀玉鉄砲と違って、「間違って弾が出ちゃった」では済みません。

自分が怪我をするだけでなく、他人にも怪我をさせてしまいます。もし目に当たったりしたら、間違いなく失明します。試合で暴発(自分の意に反して弾を発射してしまうこと)させたら、失格になることだってあります。

そんなわけで、弾を発射させようとする、その時だけトリガに指をかけましょう。


では、引き方のお話を始めましょう。

まず、トリガにかける指ですが、これはお母さん指の第一関節から爪の先までの部分です。これは、この部分が人間の指で一番鋭敏な敏感を持っている場所だということもあるようです。

さて、このトリガの引き方ですが、とっても大切で、しかも難しいのです。

ライフルなどの長物に比べて、ハンドハンドライフルやエアピストルなどの片手系精密射撃のトリガの扱いの方が難しいのではないかと思います。

なぜかといいますと、長物では、(右利きの場合)銃を左手で下から支え、ストックは右肩に付けることで、銃の重さを支えます。トリガを引く右手は比較的フリーですから、トリガを引くことだけに専念できます。

それに対してハンドハンドライフルやエアピストルでは、銃の重さを支えるのも右手、トリガを引くのも右手です。銃を動かさないように(=「静」の動き)努力しながら、同じ手で静かにトリガを引く(=「動」の動き)動作をしなければならないのです。


私がトリガを引くたびに、未だに毎回毎回心で唱えてる言葉があります。

それは「真後ろに向かって、まっすぐトリガを引け!」というものです。

初めのころは、これにもう一つ「静かに」という言葉も付いていました。

「真後ろに向かって、静かに、まっすぐトリガを引け!」ですね。

さすがに「静かに」の部分は心の中で唱えなくてもできるようになりましたが。

トリガは後ろにしか引けません。それなのに、なぜわざわざ「真後ろに向かって」や、「まっすぐ引け」なのでしょう。


試しに、トリガにかける指を深ーく入れてみてください。例えば、極端な例ですがお母さん指の第一間接と第二関節の中間部分をトリガの左端にかけてみましょう。そのままトリガを引いていくと、トリガは右斜め後ろ方向に力がかかっていきますよね。

今度は反対に指の先っちょをトリガ右端にかけてみましょう。今度はトリガを引く力は左斜め後ろに向かいます。

この二つの例は、どちらもトリガを引く力は斜めになっているのですが、最終的にはトリガは落ちます。そう、トリガは斜めに力を入れて引いても落ちるのです。


標的に向けて銃を構えた時、右斜め後ろ方向に力が入るようにトリガを引くと、重口は右を向いてしまいます。

左斜め後ろ方向に力が入ると、今度は銃口は左を向きます。

だから、トリガは「真後ろに向かって、まっすぐ」引かなければならないのです。


では、それさえ守れればトリガの引き方はマスターできたのでしょうか?

残念ながら、まだ足りません。

トリガを引く方向は正しくても、トリガにかけていく力の入れ具合にも加減が必要なのです。


片手系の銃は、特に銃の揺れが止まりません。標的のど真ん中にサイトが合っている瞬間が1秒間もあれば(銃の揺れを止めるということにおいて、これは永遠といっても良いほど長い時間です)、その間にゆっくりじわじわとトリガを引けば良いのですが、そんなに長い時間、銃が止まっていることなんてありません。ほんのわずかな瞬間だけ標的の真ん中にサイトが合う……「この瞬間を逃してなるものか!」といきなり指に力を入れてトリガを落とす。

これが「ガク引き」です。これをやってしまうと、絶対に弾は標的の中心には当たりません。


さて、どうしましょう?

トリガには「遊び」と言われるものがあります。トリガを引いても弾が出ないところがあるんですね。車のブレーキもそうですよね。ブレーキを踏んでも、実際にブレーキが効かない部分があります。ある一点までは、引いても弾が出ないけれど、そこを過ぎると弾が出る、そんな「境目の部分」があるわけです。

標的のど真ん中ではなくて、真ん中近辺を銃口がウロウロしている時に「境目の部分」の状態にトリガがあれば、あとはちょっとの力と一瞬の時間でトリガが落ちます。


銃を握ってみましょう → 銃を標的方向に向けたまま、少しずつ持ち上げていきましょう → 標的を過ぎる所まで持ち上げます → このへんで、やっと遊びの部分まで引き始める準備を始めます。

そして、標的中央に向かって銃口を降ろし標的中央付近まで行ったら、遊びの部分を引き始めます → 標的中央のあたりをサイトがウロウロし始めたら、もう遊びは引ききっていて、いつでも弾が発射できるところまでトリガを引ききっているようにします。

真ん中にサイトが合った時に、知らない間にトリガが落ちていたなんてことができたら、もう理想ですね。


この時、トリガを引くために必要なのはお母さん指だけです。手のひらや親指は、トリガを引くために動かしてはいけません。そのため、お母さん指は、グリップのどこにも触れていない状態にしておきます。

この合わせ技で、ガク引きはかなり防げるはずです。


また、ハンドハンドライフルを構えている時間ですが、4秒から、せいぜい6秒くらいまでの方が良いと思います。その時間内にトリガが引けなければ、一度銃を降ろしましょう。

銃口が標的に向いてある間は息を止めますが、例えば、その状態で10秒間息を止め続けてみましょう。目が霞んでくると思います。脳が酸欠状態なんですって。当然腕もプルプルしてきます。

銃を地面と水平の位置まで上げた状態をただ保つだけでも10秒はきついのに、ましてや標的の真ん中にサイトを合わせようと、銃を止める作業も加わるわけですから、4〜6秒が限界だと思います。


でも、なかなか降ろせないんですよねー。

「もう少しだけ銃が止まれば真ん中に当てられる!」

そんな声が、どこからか聞こえてくるんです。この「もう少し、あと少しだけ」の気持ちがどんどん溜まっていくうちに、そこに至るまでに使った労力がもったいなくて、ついその延長線上でトリガを引いてしまうんです。ここまで大変な思いをしたのに、もう一度銃を降ろして構え直すのは面倒くさい、そんな気持ちも働くようになります。その結果がガク引きです。弾は思った以上に中心から離れた場所に着弾してしまいます。


そんなあなたに、名言を差し上げましょう。私の所属する射撃チームのLictre(リクター)さんから賜ったお言葉です。

「銃を降ろす勇気を持ちなさい!」

初めてハンドハンドライフルを所持してから、はや数年。私もいまだに試合でこの言葉を唱えています。



◎サイトはどうやって見るの?

まず、大前提があります。

「目の焦点はフロントサイトに合わせる」ということです。

銃を構えて標的方向を見る時に、見えるものは3つあります。

手前から、リアサイト/フロントサイト/標的 ですね。

この3つは各々距離がありますから、目の焦点を合わせられるのは、一つだけです。それがフロントサイトなのです。

たぶん、何も知らない状態で射撃を始めると、ほとんどの方は標的に焦点を合わせて狙ってしまうはずです。しかーし、大事なのはフロントサイトなんですよ!

「弾を標的の真ん中に当てたい!」その気持が強ければ強いほど、目は標的を見つめてしまうと思います。それでも、目の焦点はフロントサイトなんです。(これも騙しませんが)騙されたと思って、信じてください。

とにもかくにもフロントサイト! フロントサイトに意識を集中します。意識してそうしないと、ついつい標的に照準が行ってしまうんですよ。意識しなくてもそれができるようになったら、一つも二つも上のレベルに行けるはず(だと、私は思うの)です。


次に大事なのが「見出し」です。横文字で言うと「サイトアライメント」ですね。

これは、標的/フロントサイト/リアサイト/目 の位置関係が正しくなっているかを確認することです。

正確な見出しを作り出すことはとても重要です。ある意味、銃をどれだけ揺らさずに構えられるかよりも、どれだけ正確な見出しを保持できるかの方が大切なのではないかと思います。

ハンドライフルを始めて間もない時期は、このサイトアライメントについては、銃を構える度に意識するようにしましょうね。ある程度すれば、これについては自動化できるようになるはずです。



◎サイトはどうやって調整するの?

ハンドライフルは、とっても性能が良いんです。極端な話、銃を機械で固定して撃ったとすれば、数発撃っても弾痕(だんこん=標的にあいた穴です)は1つだけというくらいです。

だから、例えば1枚の標的に10発撃った場合の弾痕がバラバラだとしたら、それは銃のせいではありません。撃つ人の腕です。だから、初めて銃を撃ったその時からしばらくの間は、サイトの調整をせずに、そのまま撃ってみましょう()。

しばらく撃ってみて、標的の中心ではないところに「弾痕が、ある場所になんとなくまとまっているようだ」という時期が来たら、初めて調整することになります。弾痕がバラバラなうちは、サイト調整の必要は無い(というか、調整ができない)わけです。


弾痕のまとまりは、必ずしも1cmとか2cm以内である必要はありません。5cmくらいでも良いのです。例えば、1枚の標的に10発撃ってみて、そのうち7発が5cmくらいのエリアにまとまっていれば、調整してみても良いと思います。あるいは、円の大きさが10cmと大きいけれど、10発全部がその円内にまとまっているのであれば、その円の中心が標的の中心になるように調整しても良いと思います。


 しばらくの間……どれくらいの期間、サイト調整をしなくても良いかについてです。あまりにも弾痕がバラバラの場合は、ある程度集弾率が上がってからとなるわけですが、もし射場で銃の支え台を使って射撃ができる場合は別です。
例えば、射台に椅子を乗せて、その上に銃を委託して銃を撃てる場合ですね。
支えが無い状態ではハンドライフルはプルプルと震えてしまいますよね。でも、このような支えに銃の重さを任せてトリガを引ける場合は、銃の震えは一切無く、サイトアライメントだけに集中して撃つことができます。
その状態でしばらく撃てば、9〜10点圏、あるいは少なくても黒点圏以内にすべての弾着が集まることになると思います。そうすれば、初めてハンドライフルを撃ったその日に大雑把ながらもサイトの調整を済ませることができますね。弾着の中心と標的の中心との差を測り、天地と左右の調整ネジを回せば良いわけです)


では、サイト調節の方法です。

リアサイトの近くに、2つのネジあるいはダイヤルがありますので、これをねじ回しで回す、あるいはクリックするわけです。この2つは、各々「天地のズレ」と「左右のズレ」を直すものとなっています。


私の愛銃であるモリーニからお話させていただきますね。

サイトの調節をするということは、標的の中心と弾着がズレているわけですが、調節は「実際の弾着点を、どうすれば標的の中心に近づけることができるか?」ということを考えて行うとわかりやすんですよ。


例えば、弾着が標的中心に対して30mm左のところにあったとします。この場合は「弾着を右に30mm動かせば中心に当たる」と考えるわけです。ですから、「R」(Right=右)方向にネジを回します。説明書によると、1クリックで1.5mm弾着が動くので、30÷1.5=20クリック回すことになります。

弾着が標的の中心に対して30mm下にあった場合は、「弾着を上に30mm動かせば中心に当たる」と考えます。「U」(UP=上)方向にネジを回します。1クリックで3mm弾着が動くので、30÷3=10クリック回すことになります。


「U」=Up、「R」=Rightは何となくわかりますよね。では、例えばステイヤーはどうでしょう?上下の調整については、表示が「T」と「H」という表示になっているんです。ちなみにドイツ語で「Tief」と「Hoch」のことらしいのですが、わかり難いですよね。でも、これには良い覚え方があります。なかなか分かりやすくて、一度聞いただけですぐに覚えられたので、皆様にもご紹介します。私の所属する射撃団体 チーム・カナリアの「けいこうさん」(某射撃協会でデジタルスポーツピストルの指導員もされています)に教えていただきました。

 弾着を「高くする」=「T」……高くする(T AKAKUする)

 弾着を「低くする」=「H」……低くする(H IKUKUする)

です。

弾着が標的中心よりも下に集まっていたら、弾着を「高くする」ので「T」方向にクリック、上に集まっていたら、弾着を「低くする」ことになるので「H」方向にクリックするわけですね。


ステイヤーの左右についてですが、これは「どれだけ弾着が標的中心よりも行き過ぎているか」を考えると良いと思います。弾着が標的中心よりも右に行き過ぎている場合は「R」、中心よりも左に行き過ぎている場合は「L」方向にクリックして弾着の修正を行います。

モリーニでは、弾着を右に動かしたい場合は「右に動かしたい=R」でしたから、ステイヤーは逆ですね。中心よりも「右に弾着してしまっている」なら、右=「R」方向にクリックとなるわけです。

(ちなみに「R」はRightではなくドイツ語のRecht、「L」はLinkなのだそうです)


最後に、一度調整したサイトは、しばらくは動かさないようにしましょうね。ケースに収納するたびにサイトを取り外すライフルと違って、ハンドライフルの場合はそんなに狂ったりはしませんから。

毎回毎回練習の度、試合の度にクリックをして調整する必要はありませんよ。また、一度に10数回クリックするのも最初だけです。練習を重ねるうちに、どんどん弾着の円は小さくなってきますが、それに従って標的中心と弾着との距離が小さくなりますから、それに合わせて、調整する時のクリック数も少なくなります。
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