ハンドライフルのマコちゃん

AP(エアピストル)に特有のこと



ハンドライフル競技とエアピストル競技、どちらも使用する弾や標的は全く同じですし、ハンドライフルの競技ルールはAPのそれに準じていますから、APに移行したとしても、やることはあまり変わりません。

それでも、ハンドライフルの時には経験したことが無いイベントにちょこちょこと遭遇するはずです。

ここでは、そういった事柄について、APを手にした時に困らないように、予習的な意味で載せてみます。



◎エアピストルがお取り上げになることがあるって本当?

残念ながら本当です。

しかも、サボっていると、かなりの確率でそうなります。


ハンドライフルは、一年間にほとんど撃った事が無かったというように使用実績に問題がある場合(いわゆる眠り銃の状態ですね)を除き、ずっと所持し続けることができました。

エアピストルになると、それができません。

ハンドライフルの3年間に対して、エアピストルの更新期間(正確には「更新」ではないのですが、これは後述します)は2年間です。

その期間が終わるまでに腕が上がっていない人は、次の更新はさせないよ、というわけです。

では、どれだけの期間にどれだけ腕を上げなければならないのでしょうか?


初めてエアピストルを取得するための申請を申請1回目としましょう。

そこから2年が経過して2回目の申請=初めての更新作業()をする時には、初段=510点を取得していなければお取り上げとなります。

同じようにして4年が経過し3回目の申請時には2段=525点を取得していなければ、これもまたお取り上げとなります。

そして、初取得から8年が経過し、5回目の申請時には3段=540点が必要です。


この規程の点数は今までに何度か底上げされました。すなわち、達成しなくてはならない点数が上がってしまったことにより、その点数が撃てなくて銃を手放すことになった人は増えるわけです。

そのおかげで推薦待ちをしている人達の待ち期間が短くはなったのですが、楽しみとして射撃をすることが苦痛になる人も増えました。

たしかに推薦書にはこのように書かれています。

「この者は、国際的な規模で開催される運動競技会の選手またはその候補者として適当であります」

だから、それにふさわしくない人はエアピストルを持ち続ける資格は無いという理屈なのでしょうが、それにしても……。


それと、初段を「取得」、二段を「取得」というように、日本ライフル射撃協会が主催しているか公認している試合で段級審査と呼ばれる試験を行い、それに合格しなければなりません。

「その点数は普段の練習で撃っています!」ではダメなんですよ。


さらに、3段を取得しても安心はできません。

5回目の申請後には、段級審査の受験は必要なくなりますが、毎年一定以上の規模の試合で、最低一試合は510点を撃ったという実績を作らなくてはなりません。

 → 2011年4月から、また変わるそうです。510点から530点になります。
 → 女の子は400点満点で353点になります。

これは人によってはかなり厳しいかも。

→「空気けん銃の所持に関する推薦基準要綱」の通達があり、また変更になりまた。
今度は、少し下がりました。

 男子60発競技は、2段点=525点
 女子40発競技も、2段点=350点


安心はできませんが、8年が経過した時点で3段を取得していれば、その後は年に2回の一定規模の大会に参加しつつ、毎年最低でも2段点さえ撃っていれば永久にAPは所持し続けられるわけです。

そのため、この三段を「永久ライセンス」と呼んだりする人もいます。


「更新」作業と言いましたが、実際には更新ではありません。エアピストルの場合は、更新はできず、毎回新規の申請となります。ややこしいですね。つまり、2年が経過して、引き続き同じ銃を持ち続けるためには、新規に所持許可申請を行い、銃の譲渡証明も、譲り渡し者が自分で、譲り受け者も自分というヘンテコな形になるのです。そのため、所持許可証は毎回新しいものになります。もちろん日本体育協会(日本スポーツ協会に名称変更)の推薦書も毎回取得しなければなりません。



◎試合開始前に銃の検査をされます

仙台支部大会、東京都大会のような支部の大会では省略されることもありますが、エアピストル競技では試合前に銃の検査が行われます。検査内容は大きく分けて2つです。

まず、銃の大きさのチェック。これは検査場に用意された基準箱にエアピストルを入れることでチェックします。試合前、参加申し込みをする時にやることになります。

基準箱にエアピストルを入れ、そこからはみ出さないかをチェックされます。基準箱の大きさは、内側の寸法で横420×縦200×深さ50mmとなっています。

どのエアピストルもISSF(International Shooting Sport Federation=国際射撃連盟)のルールに準じて作られていますから、買ったまま何もいじっていなければこの検査は大丈夫です。
ただ、モリーニ以外のメーカーの銃はグリップの角度を変更することができます。また、それができないモリーニでも、選手それぞれがパテを盛ったりして加工していることがあります。そうすると、いずれの場合も基準箱に収まらない可能性が出てきます。

その場ではみ出した部分を削るなり、グリップの角度を変更するなどして検査に合格しなければなりません。もちろん、検査合格後にグリップの角度をもとに戻すのはダメですよ。


次に、トリガの重さのチェックがあります。トリガプルの検査なんて言い方もしますね。

これには、写真のような「トリガ・ウェイト」と呼ばれるオモリを使用します。このオモリの重さはピッタリ500gなんです。ルール上、トリガプルの規定値が500g以上無ければいけないため、この最低規定値をクリアできるかどうかを調べられるわけです。



 ↑ 赤丸部分をトリガにひっかけます


まずコッキングします。弾を入れる部分の入口を開けて、(もちろん弾は入れないで)閉めます。ドライファイアの機構を持つ銃の場合は、きちんとエアが発射される状態にしておかなければなりません。

       
 ↑ 開けて                                                ↑ 閉めます


これで発射用エアーを出せる状態になりました。この状態にしてから検査が始まります。



 ↑ ここにトリガ・ウェイトをひっかけます


トリガ・ウェイト(一番上の写真)の赤丸部分を、この写真のトリガの赤丸部分に引っ掛けて、「銃身が地面に対して垂直になっている状態を保ったまま(ルールがこのようになっているのです)」静かに銃を上に持ち上げます。エアーが発射されない=トリガが落ちない状態のままオモリが持ち上がればOKです。たいていは2〜3mm浮いたところでOKの指示が出ると思います。OKが出たら、そのまま銃をちょっと上下に揺らして、振動でトリガを落としてエアーを出します。



 ↑ 銃を持ち上げる時、この写真のように充填ラッチが開いていてはいけませんよ。


検査台の上にひじを乗せた状態で静かに銃を持ち上げるのがコツですね。静かに、静かーに、持ち上げましょう。


もしオモリが持ち上がる前にトリガが落ちてしまったら……その時点で1回目の検査は失格です。その場で再度コッキングして、またオモリを持ち上げます。普段とトリガの重さが変わったわけではないのに、緊張していると失敗しちゃうんですよね。私も生まれて初めての検査は失敗でした。

2回目も失敗したら……大丈夫、もう一回チャレンジできます。3回目もダメだったら……一度検査の列から抜けましょう。工具箱を出してトリガの重さを調整、再び列に並びましょう。大丈夫ですよ。初めの検査で3回共ダメだったとしても、調整後もう一回チャレンジすれば良いだけですから。

それと、この検査中は、常に銃口の向きに注意を払いましょうね。くれぐれも銃口を人の方になんか向けちゃだめですよ。



◎試合後にも、銃の検査をされ(る事があり)ます

これも大きな大会のお話です。

みんな「少しでもトリガを軽くしたい」って思っています。でも安全上の理由から「最低でも500gは確保してね」となっています。それを調べるために、試合前に皆さんもトリガの重さの検査をしましたよね。

ところが、もしも検査時だけ500gを軽々パスできるだけの重さにしておいて、検査合格後、試合が始まる前までに500gを割る軽さにして試合をしたズルっ子がいるかもしれません。そんな人がいないかな?という、トリガの再検査が抜き打ちで行われるのです。

「抜き打ちで」というのは、こういうことです。

射群ごとに、ランダムに選ばれた何人かの選手に対してだけ再検査を行います。しかも、自分が当てられるかどうかは、撃ち終わるまでわからないのです。

試合後に審判さんから声がかかった選手は、別室に呼ばれてそこで検査を受けます。あるいは、その場で(=撃ち終わった、自分の射座のところで)検査を受けさせられます。その場合は、係の方が射座までトリガ・ウェイトを持ってきてくれます。


ここでも持ち上げられる回数は3回まで。もしこれに合格できなければ、失格となってしまいます。公式点数無し、順位も無しです。試合前のトリガ検査は、3回ダメでも再調整後に再び検査できました。試合後の抜き打ち検査は、最初の3回だけです。また、「いやです、この検査は受けたくありません」なんて言ってこの検査を拒んでも、やはり同じように失格となってしまいます。



◎ハンドライフルの時には無かった全国大会があります

ハンドライフルの時の試合の規模は、一番小さな単位である◯◯支部大会から始まって、県のライフル射撃協会の◯◯県大会、複数の県にまたがって行われる、例えば3県合同大会、東日本大会などで終わりでした。

エアピストルになると、その上の全国大会があります。

また、国体やワールドカップ、オリンピックなどもあります。このサイトを書いている私も、見てくださっている方も、大変失礼ながらまだそこまでのレベルではないと思いますので、とりあえず全国大会についてお話しますね。


場所は埼玉県朝霞市にある陸上自衛隊朝霞駐屯地の中にある朝霞射場です。(老朽化による閉鎖のため、埼玉県の長瀞(ながとろ)射撃場に変更となっています)です。
ここは正式には「朝霞オリンピック射撃場」といって、昭和39年の東京オリンピックの時に建てられた歴史ある(=古ーい)射撃場です。日ラ主催で春夏秋冬の年4回開催されます。
ピストル射手の聖地なわけです。
(私が生まれたのも東京オリンピックの年ですから、思い入れのある射場なんです)

→2016年の6月に、50mピストル(俗に「フリーピストル」っていいます)の春季全国大会で朝霞射場に行ってきました。

なんと……



 ↑ エアピストルの射場が取り壊されていました

老朽化による取り壊しなのだそうです。
そのため、春夏秋冬のエアピストル全国大会は埼玉県の長瀞射撃場に移ることになってしまいました。


全国大会の当日、射場に着いたら、まず標的をもらうために(今は、長瀞射撃場の全国大会は全て電子標的となりました)受け付けをしますが、係員の方が持っている受付管理票は、選手の所属支部ごとの形になっていません。「◯射群の◯射座は誰それ」というように、射群と射座順の表になっています。ですから、まずは貼り出されている射座割り(しゃざわり)を見に行きましょう。そこで自分の順番がわかったら、再び受付で「◯射群の◯射座、誰それです!」と言いましょう。

標的は、その受付でもらえます。全国大会では、かならず1圏的1枚撃ち込み。なので標的は本射60枚+試射的4枚の合計64枚(輪ゴムは6本)になります。受付後の銃検査が終わったら、この標的すべてに「射群/射座/標的ナンバー」を手書きで入れていきます。「射群はすべて同じ数字/射座もすべて同じ数字/標的ナンバーは1〜60」となります。黒のボールペンを忘れずにおうちから持って行きましょうね。この作業はけっこう時間がかかりますから、余裕を持って自分の試合開始時間よりも前に射撃場に着くようにしましょう。
……全国大会は、すべて電子標的になりましたね。紙標的とか輪ゴムの話は忘れてください。


そうそう、開始時間と言えば、一日の試合は3つの射群で構成されていて、3射群目は午後になってしまいます。1射群目の人は8時台の到着が必要ですから、開始時間にはかなりの差があります。
日ラのホームページを見ることができる方は、事前に自分の射群をチェックをして行くと良いですね。開会式等はありませんから、例えば第3射群の人はお昼頃に着いていれば良いわけです。
前は事前に発表されていなかったので、朝から午後まで待っているのが大変だったんですよ。良い時代になりました。
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