ハンドライフルのマコちゃん

AP(エアピストル)の取得について



ハンドライフル競技をしている人たちは、たぶん、そのほとんどが将来的にはAP(えーぴー)=Air Pistol(エアピストル)を取得する予定ではないかと思います。

使用する弾も標的も全く同じですし、ハンドライフルの競技ルールはAPのそれに準じていますから、APに移行したとしても、あまりやることは変わりません。それでも、ちょこちょことハンドライフルの時には経験したことが無いイベントに遭遇するはずです。

ここでは、そういった事柄について、APを手にした時に備えての予習的な意味で載せてみます。


◎そもそも、エアピストルはどうやって取得するの?

まず、17歳以下の方は、18歳になるまで待ちましょう。18歳以上の方の場合は、APを取得するためにやらなければならないことが、大きく分けて二つあります。

前半は、日本ライフル射撃協会を経由して日本体育協会(日本スポーツ協会に名称変更されました)から「推薦」状を取得するまで。
ここまでは、AP所持許可の申請書を出すのではなく、申請書を出す時に添付しなければいけない「推薦状」を申請するまでの手順です。後半は、入手した推薦状を添えて、実際にAP所持許可申請書を提出するまで、です。

なるべくなら一般の人にピストルを持たせたくはないと思っているおまわりさん。そのおまわりさんに対して「これこれこういう理由だから持っても良いでしょ?」という言い訳になるのが「推薦状」です。
推薦状に書かれていることを要約すると、こんな感じです。

「この人はもしかしたらオリンピックやワールドカップみたいな世界規模の大会に参加できるくらいすごい人なのかもしれませんよ。まぁ、試しに少しの間だけピストルの所持を許可してやってくださいな」



◎推薦状を申請するには

この推薦状の申請に必要な手順は以下のようになります。

1.ハンドライフル/エアライフル/デジタルスポーツピストル(今はビームピストルになりました)のいずれかを所持する

(ビームピストルでも可能ですが、試合数などを考えると現実的ではないと思いますから、ここでは省きます)


2.前述した銃のいずれかで段級審査を行い、初段を取得する

ハンドライフル初段は、男女共通で40発競技なら350点、60発競技なら525点です。エアライフルなら、立射男子60発競技で510点、立射女子40発競技で340点です。


3.一年間に2回以上、ライフル射撃場協会主催の(支部主催で可)試合に参加する


4.日本ライフル射撃協会が主催する「ライフル射撃に関する講習会」に参加する


5.所持したいAPの種類を選ぶ


申請書には、購入する銃の銘柄(「モリーニのCM162EI」とか「ステイヤーのLP10」といった感じ)を記入しなければなりません。推薦状がおりた後に「やっぱり違う銃が良かった」となった場合は、銃種変更できなくはありませんが、手続きが大変です。時間も余計にかかます。



◎申請に必要な書類は?

上記1〜5がクリアできたら、所属しているライフル協会の支部に必要な書類を教えてもらい、それを揃えて支部宛てに郵送します。

おかしなことに、その支部によって必要な書類が違うんですよ。また、その年によっても必要な書類は変わります。だから、これはその都度確認してくださいね。

だいたいのところは、以下のような書類です。

1.ライフル射撃に関する講習会の修了証のコピー

2.日本ライフル射撃協会の会員証のコピー
  
……日ラの会員で、なおかつ入会から1年以上経過しているかの証明

3.初段以上(二段でも三段でも)の段級証書のコピー

4.ライフル射手手帳のコピー


  ……年に2回以上試合に参加したという証明

5.住民票(本籍地記載のもの)原本

6.写真=ライカ判(運転免許証と同じサイズ=3.0×2.4cmに変更)×1枚

7.猟銃等講習会の終了証のコピー

8.8.銃砲所持推薦申請書×2通


この他に、申請料が数千円かかります。



◎申請してもすぐには届かない推薦書

これで、やっと前半の目的「推薦状を入手する」までたどり着きました。

しかし、正確に言うと「推薦状を入手する……ための手続きだけが完了した」となります。手続きは完了したけれども、推薦状はすぐには手元に届きません。

これはご存知の方も多いのですが、俗にいう500人枠(わく)問題のためです。

もともと民間人が拳銃を所持することは日本では不可能でした。それが、オリンピックや世界選手権に優秀な選手を派遣するためには選手の幅広い養成が必要だという名目で、日本全国500人の枠で許可されることになったのです。この500人の中には、自分の銃としてピストルを所持するおまわりさんや自衛官の方も含まれています。

この500人枠は、たいてい埋まっています。では、新規にエアピストルを持ちたい人はどうすれば良いのでしょう?なんと、この500人枠に欠員が出るのをじーっと待つしかないのです。この欠員はどういう場合に出るのかは、次の項目「APがお取り上げになることがあるって本当?」に書きますが、欠員が出て自分の番が回って来るまでには早くて数ヶ月、長ければ1年以上かかります。(私の場合は6ヶ月待ちました) この欠員待ちをクリアし、500人の空きに食い込めたら、晴れて推薦状が手元に届きます。


これで安心して自分の銃を買うことができます。推薦状に書かれている銃を買いにいきましょう。
前述したように、この時点で申請した銃以外に心変わりした場合は、新しく推薦状をもらわなければなりません。なぜなら、推薦状には「この銃を買うなら許可するよ」って、銃の銘柄が書かれているからなんです。



◎推薦書が届いたら、AP所持許可証の申請ができます

続いて後半の「やっと手にした推薦状を添えてAPそのものの所持許可証を申請するまで」ですね。

推薦状は郵便で手元に届きます。それが届いたら、自分の住んでいる住所の所轄警察に所持許可申請をすることになります。ハンドライフルやエアライフルからAP所持する方は馴染みのある警察署ですが、デジタルスポーツピストル(今はビームピストルになりました)からAP所持をする方は、ここで初めて警察署に行くことになりますね。

必要な書類は、これもなぜか警察署によって違います。お世話になるのは警察署の「生活安全課」または「保安課」です。
申請や受け取りの業務は平日の昼間に直接足を運ぶ必要がありますが、必要な書類についての問い合わせは電話でも大丈夫です。

「空気けん銃(おまわりさんに言う時には「エアピストル」でなく、「空気けん銃」の方が話が通りやすいようです)の新規所持許可申請をしたいのですが、どんな書類が必要なのか教えてください」みたいな感じで電話しましょうね。


必要書類は、だいたい以下のとおりです。

1.日本体育協会(今は日本スポーツ協会)の推薦書

  ……郵便で届きます

2.同居親族書×2通

3.経歴書×2通

4.銃砲所持許可申請書×2通


  ……2と3と4は、住んでいるところの警察署のウェブサイトや銃砲店のサイトからダウンロードできます

5.譲渡承諾書×2通

  ……銃砲店があなたに銃を譲ることを承諾する旨が書かれたもの

  → 銃砲店で書いてくれるはずです。

6.診断書

  ……「指定病院はあるのか」「診断書の書式は決まったものがあるのか」などについて、警察署の生活安全課で確認してくださいね。この診断書の料金ですが、4千円くらいから、2万円!なんて幅があるようです。
どの病院で診断書を書いてもらえるかがわからない場合には、所属協会に所持許可申請の診断書を書いてもらえる病院のリストがあると思いますので、近くの病院を教えてもらったらどうでしょうか。
もし自分で直接病院に電話する時には「警察にピストルの所持許可申請をしたいのですが、それに必要な診断書を書いていただけますか?」という感じでしょうか。

7.身分証明書(破産者・禁治産者でないことを証明するもの) 

  ……本籍地の区役所・市役所に行かなければなりません。これは郵送で取り寄せることもできるところもあるようです。聞きなれない書類ですが、役所で「破産者や禁治産者でないことを証明する身分証明書が必要なのですが」って言えば教えてくれるはずです。

8.面接調査票

9.誓約書


  ……8と9は、警察署に書類を届けに行った時に、そこで担当者に書いてもらう書類です。前もっての準備は不要です。

10.日ラ会員証

11.ライフル射手手帳

12.猟銃等講習会の終了証明書

13.写真=ライカ判(運転免許証と同じサイズ=3.0×2.4cmに変更)×1枚


その他、印鑑や申請手数料(1万円くらい)がかかります。


くどいようですが、これらも警察署によって変わります。確認してくださいね。私の場合は、これらの他に、申請するピストルの取扱説明書や写真も必要でした。
今にして思うと、私の管内でエアピストルを所持する人が初めてだったからのようです。そのため、「いったいエアピストルってどんなものなの?」って思ったのでしょうね。


以上の書類が揃ったら、警察署に「平日の昼間、直接本人が出向いて」申請をしにいきます。せっかく会社のお休みを取って警察署に行っても、「担当者が席を外しています」の一言で受け付けてもらえない可能性が十分にあります。事前に生活安全課に電話をして、予約をしておきましょう。「空気けん銃の新規所持許可申請をしたいのですがご都合はいかがでしょうか?/生活安全課のどちらさまをお訪ねすればよろしいですか?」といった感じです。



◎所持許可証を引き取りに行きましょう

無事受付完了したら、あとは生活安全課から「所持許可証ができましたよー」という電話連絡を待ちます。通常1ヶ月から3ヶ月かかります。一人暮らしの方は、担当者に携帯電話や勤務先の電話番号を知らせておきましょうね。

電話を受けたら、これまた「平日の昼間、直接本人が出向いて」生活安全課に取りにいきます。この時も「担当者が席を外しています」でパーになっちゃうことがありますから、しっかりと「何日の何時に取りに行きたいのですがよろしいでしょうか?」って確認しておきましょう。



◎銃砲店と警察署を往復します

所持許可証を受け取ったら、次に銃砲店に行きます。所持許可証を銃砲店に見せて、買ってあった銃を受け取ります。(所持許可証を持っていなかったこの時点までは、売ってはもらえても受け取れなかったわけですね)

これでも、まだ撃っちゃだめですよ。

もう一度警察署に引き返して、その銃と所持許可証を一緒に見せて確認を受けます。これは、時間があればもちろん銃を引き取ったその足で警察署にトンボ帰りしても良いですが、所持許可証交付から2週間以内に、と決まっています。

警察署で確認のハンコを押してもらったら……あー、長かった!
これで、やっと撃つことができます。今までハンドライフルで通っていた射場へ、今度はエアピストルを持って撃ちにいくことになるのです。
その足で射撃場デビューすることもできますが、まだエアピストルのシリンダに空気が入っていませんから、一度自宅に戻って、買ってあったハンドポンプやエアタンクで圧縮空気を充填しなくてはなりませんね)


最後に、ハンドライフルとは違って、APの場合は誕生日起算ではなく、所持許可日で起算され、その期間は2年間となります。2年が終了したら、次回は更新申請ではなく、また新規に所持許可申請を行います。推薦状も新たに日本体育協会に申請しなければなりませんし、譲渡承諾証も「譲渡者が自分で、譲渡受け者も自分」というヘンテコなものとなります。
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